Pixel 8 Proレビュー!バランスが取れたクセのない無難な1台

今回は「Googleが作ったAIスマホ」のCMでお馴染みのGoogle Pixel 8 Proの長期レビューをしていく。

国内でのブランド認知も進み、順調に販売数を伸ばしているPixelシリーズ。7aからはdocomoでの取り扱いも再開され、価格コムの人気ランキングでは、常に10位以内にランクインしている。※docomoではPixel 3aを最後に取り扱いが途絶えていた。

6シリーズ以降はSoCをQualcommのSnapdragonから、自社設計のSoCである「Tensorチップ」に変更。これによりGoogleの意図する制御ができるようになったうえに、チップ調達コストの抑制による本体価格の値下げにも繋がり、コスパが良いスマホという印象が根付いた。

自社設計のSoCに切り替えてから8シリーズで3代目となり、端末の完成度は上がってきている。

目次

Google自ら謳うAIスマホ。AI処理を用いたユニークな機能が満載なPixel 8 Pro

Pixel 8シリーズから、GoogleはPixelをAIスマホと呼ぶようになった。AIを活用した機能で競合他社との差別化を図っていることが見て取れる。

特定の音やノイズだけを消せる「音声消しゴムマジック」

音声消しゴムマジックは、撮影した動画の音声を「声」「ノイズ」といった形で分類し、その中から特定の音だけを消すといった機能になる。

騒音だけを消す、逆に人の声だけを消す、といったことが可能だ。詳しくはGoogle公式が出している動画を参照してほしい。

ベストな1枚が撮影可能「ベストテイク」

ベストテイクは、人物が複数映る集合写真において、それぞれの人の表情を変えられるという機能になる。

具体的には、10秒以内に同じ画角や構図で撮影された複数の写真を組み合わせて、写っている人の表情を変えられるというものだ。

例えば集合写真で、ある1枚では目をつぶっていたとしても、別の1枚で目をつぶっていなければ、つぶっていない方の表情を採用できる、といった形だ。これにより、写っている人物全員の表情を変更でき、ベストな1枚を生成できる。

詳しくは下記の動画を参照してほしい。

基本性能もしっかり強化されたPixel 8 Pro。使い勝手も着実に向上

今回のPixel 8 Proは細かい部分も地味に進化している。ディスプレイ輝度は、7 Proの「1,000ニト(HDR)・1,500ニト(ピーク輝度)」から「1,600ニト(HDR)・2,400ニト(ピーク輝度)」に向上。ディスプレイガラスも「Gorilla Glass Victus」から「Gorilla Glass Victus 2」となり、耐久性が上がっている。

ただ画面の解像度は若干落ちているため、スペックアップしている部分とスペックダウンしている部分があるようだ。基本スペックは下記の通り。

本体サイズ高さ162.6mm × 幅76.5mm × 厚さ8.8mm 重量213g
SoCGoogle Tensor G3
OSAndroid 14
メモリRAM12GB ROM128GB / 256GB / 512GB
外部メモリなし
バッテリー容量5,050mAh
ディスプレイ6.7インチ(1,344 × 2,992)
SIMnanoSIM / eSIM

OS・セキュリティアップデート期間は最大7年。安心して使える

Pixel 8シリーズからは、OS・セキュリティアップデートともに7年となっている。Android OSの開発元であるGoogleだからこそ、途中でサポートが打ち切られることもないだろう。

ユーザーとしては7年間のOS・セキュリティアップデート保証は心強い。しかし一方で、アップデート期間の前にハード側が限界を迎えてしまいそうと個人的には感じる。

上記の理由はあれど、このサポートの手厚さは購入を検討するメリットの一つだと言える。

AI補正で綺麗に撮れるカメラ

Googleはハード性能より、ソフトウェアを強化することによって、綺麗な写真撮影を可能としてきたスマホだ。そのため、毎年大幅なハード性能の向上が行われることは少ない。※Pixel 8 Proでは、イメージセンサーやレンズは若干変更となっている。

また今回からカメラアプリに「プロ設定」が搭載され、シャッタースピードやフォーカス、ISOなどをマニュアルで調整できるようになった。

超広角広角望遠インカメラ
画素数4,800万画素5,000万画素4,800万画素1,050万画素
F値F1.95F1.68F2.8F2.2

作例一覧

ここから作例を掲載する。作例は全て撮って出しの無加工状態で、撮影時のカメラ設定も全て初期値のままだ。

日中

広角(1倍)

AIの補正がしっかりと効いており、構えてシャッターを切るだけで綺麗な写真が撮影できる。

広角(2倍)

メインセンサーが5,000万画素と高画素なため、2倍ズームで撮影しても劣化を感じることはない。

超広角

超広角は前機種のPixel 7 Proから画素数が4倍となり、解像度の高い写真が撮影できる。画角も広くて扱いやすい。

望遠(5倍)

光学5倍のペリスコープ望遠レンズのため、デジタルズームのような劣化はなく、こちらも綺麗に撮影できる。ただ空の色味は、広角・超広角と比べて薄めに出ている印象だ。

ズーム撮影

0.5倍
1倍
2倍
5倍
10倍
30倍

ポートレート

ポートレートは程よいボケ感で撮影できる。ピントも合わせやすく扱いやすい。

夜景

夜景は「夜景モード」に設定し、全て手持ちで撮影。

広角(1倍)

広角(2倍)

超広角

望遠(5倍)

夜景も日中と同様に綺麗に撮影できるが、ゴーストが発生しやすい印象を受けた。また遠距離にある光源(街頭看板)は白飛びしやすく、環境によっては撮影が難しいと感じる場面も発生する。

普段使いには問題ないが、価格を考えると少し物足りない部分もあり

基本性能自体は前機種の7 Proより進化はしており、普段使いで不満を感じることはないが、やはり他のハイエンド端末と比較すると物足りないと感じる部分がいくつかある。

SoCのTensor G3の性能は控えめ

Google自社設計SoCであるTensorチップの性能は、他社のハイエンド端末に搭載されているSnapdragon 8シリーズも最新モデルと比べると劣る。

Googleとしては単純なベンチマークで競争するつもりはないのだろうが、この価格帯の端末の性能としては物足りないというのが正直なところだ。

負荷が大きいゲームの「原神」をプレイすると、最高設定で快適にプレイすることは難しい。※Snapdragon 8Gen2端末であれば、発熱はあるものの処理落ちせずにプレイできる。

そのため、ゲームをガンガンプレイするユーザーにPixel 8 Proはおすすめできない。

為替の影響でコスパは低下。Proモデルは割高かも

Pixelが国内でここまでシェアを伸ばせたのは、「コストパフォーマンスが良い」という点が挙げられる。特に廉価版の「aシリーズ」は、必要十分な性能が5万円ちょっとで手に入るという点がユーザーからの評価を受けた。

無印・Proモデルも性能考えると割安で、6・7シリーズまでは、無印モデルで7〜8万円、Proモデルで11〜12万円程度だった。

しかし8シリーズは急激な円安に加えて米国でも値上げとなり、無印・Proモデルの両方の国内販売価格は、3〜3.5万円の値上げとなった。これにより「Pixelはコスパが良い」という印象が薄れつつある。※廉価モデルのaシリーズでも、7aと比べて8aシリーズは1万円の値上げになっている。

そのため、コスパ重視で購入を検討している人は注意が必要だ。

電池持ちは正直悪い。1日中使うならモバイルバッテリー必須

使い方によって当然変わってくるが、自分の使い方だと朝100%の状態でも、夕方には30%を切っていることが多い。写真撮影をすると、減る速度はもっと早くなるだろう。

Tensor G3はSnapdragon 8シリーズと比べて、スコアが低い分省電力なのかと思っていたが、使ってみると電池持ちが良くないというのが正直な感想だ。

パフォーマンス控えめのチューニングを行うのであれば、せめて電池持ちは改善してほしいところだ。

今からPixel 8 Proを買うのはありなのか

さて、8月14日にPixel 9シリーズが発表となった。今回のProモデルは、小型モデルと大型モデルの2種類に分かれた。iPhoneのProシリーズと同じラインナップになったと言えば想像しやすいだろう。

Pixel 8 Proの後継機種は9シリーズで見ると大型モデルのPixel 9 Pro XLとなるが、本体価格は18,000円の値上げとなる。7 Proから8 Proの時も価格上昇が話題となっていたが、悲しいことに今回も値上げとなった。

こうして改めて価格を見ると、7 Proから9 Proで5万円以上値上げされていることがわかる。「Pixelはコスパ最強」というのは、もう過去の話となった。

話を戻して、「今からPixel 8 Proを買うのはありなのか」に対する筆者の見解としては、「中古で安く買えるならあり」になる。そもそも定価の128GBモデルで16万弱という価格設定は、ハードスペックからして少し割高だと個人的には考えており、この考え方自体は、9シリーズでも変わらない。

ただ安く購入できるのであれば、話は変わってくる。特に8 ProからはOSのアップデート期間が7年と、従来のサポート期間から大幅に延長となったため、型落ちによるアップデート期間の減少を心配する必要もない。

ただ繰り返しにはなるが、定価は高すぎるので、128GBモデルの美品を10万以下で購入できるのであれば悪くはないだろう。

Pixel 8 Proは器用貧乏なスマートフォン

Pixel 8 Proを一言で表すなら、「器用貧乏」だ。ハード面を見ると、他社のハイエンド端末と比較して突出した特徴がなく、ソフト面もAIを活用したユニークな機能があるものの、「それが普段の生活にどれだけ影響するのか?」と聞かれると疑問が残る。

ただGoogleもPixel Foldといったフォルダブルスマホにもチャレンジしており、成熟したスマホ市場の中で頑張っている方だとも感じている。

通常Googleほどの大きな企業では株主からの圧力が強い。それゆえ収益性の高いビジネスへの投資が求められ、競争が激しく飽和しつつある市場へ投資はしづらくなる。

また生成AIの競争も激しくなり、Googleは今後より生成AI部門への投資に注力していくだろう。Googleを取り巻く環境は決して良いとは言えないが、Android OSの改良、Pixelの進化に期待していきたい。

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